リアクトルとは? 基礎知識やACリアクトル・DCリアクトルの特性、トランスとの違いを簡単に解説
インバータ回路の設計でリアクトルを選ぶ際、ACリアクトル・DCリアクトルのどちらが適切か、あるいはトランスで代用できないかと悩んだことはないでしょうか。
リアクトルは電力変換回路に広く使われる部品ですが、設置場所によって働き方が大きく変わります。用途を誤ると回路全体に影響が出る恐れがあります。
本記事では、リアクトルの基礎知識からACリアクトル・DCリアクトルの特性、トランスとの違いまで、わかりやすく解説します。
- 1. リアクトルの基礎知識
- 1-1. リアクトルとは
- 1-2. 基本的な仕組みと構造
- 1-3. 回路での主な役割
- 2. ACリアクトルとDCリアクトルの特性
- 2-1. ACリアクトルとは
- 2-2. DCリアクトルとは
- 2-3. 両者の違いと使い分け
- 3. トランスとの比較
- 3-1. リアクトルとトランスの違い
- 3-2. 電圧変換か電流安定か
- 3-3. 巻き線とコアの構造
- 4. 選定時に意識すべきポイント
- 4-1. 国際規格と高調波抑制への対応
- 4-2. 熱対策と小型化の両立
- 4-3. 形状別のバリエーション
- 5. まとめ
1. リアクトルの基礎知識
まずは、リアクトルの原理や構造を見ていきましょう。
リアクトルとは
リアクトルは、電磁誘導を利用して電流をコントロールする受動部品です。
原理は電子回路に使われるインダクタやコイルと同じですが、大電力を扱う産業機器や電力設備向けに設計されています。インバータやモーター駆動回路に組み込まれ、システムの安定稼働を支えています。
基本的な仕組みと構造
リアクトルの構成部品は、磁石に近い性質を持つ「コア(鉄心)」と、電線です。コアの有無によって、主に以下の2種類に分類されます。
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| 鉄心リアクトル | 空心リアクトル |
- 鉄心リアクトル:鉄心にコイルを巻いたタイプです。高いインダクタンスを得やすく、一般的な機器で広く普及しています。
- 空心リアクトル:鉄心を持たない形式です。大電流でも磁気飽和が起きないため、大電力を扱う設備などで採用されています。
導線に電流を流すと、周囲に磁界が発生します。電流が急に変化しようとすると、それを打ち消す方向に逆起電力が生じます。この電流の変化に抗う性質がリアクトルの基本原理です。
回路での主な役割
リアクトルは電流の変化を抑える性質を活かし、主に以下の役割を果たします。
- 平滑化:交流から直流へ変換した直後の、波打つ電流をなだらかにします。これにより安定した直流電流を供給します。
- 高調波の抑制:スイッチング動作などで発生する不要な高周波ノイズを遮断し、波形の歪みを整えます。
- 過電流の抑制:モーター起動時の突入電流などを緩和します。限流リアクトルとも呼ばれ、後段の半導体素子を保護します。
2. ACリアクトルとDCリアクトルの特性
インバータ回路に組み込まれるリアクトルは、設置場所によって、ACリアクトルとDCリアクトルの2種類に大別されます。ここでは、それぞれの特性や使い分けのポイントを解説します。
ACリアクトルとは
ACリアクトルは、インバータの入力側または出力側の交流回路に設置されます。
主な目的は、外部との間で生じる電気トラブルを防ぐことです。入力側では、雷などのサージ電圧からインバータを守り、電源網へのノイズ逆流を防止します。出力側では、電圧波形を滑らかに整形し、モーターの異常発熱や騒音を低減します。
このように、波形の歪みを是正してシステム全体の負担を下げるのが特徴です。電気の利用効率である「力率」を改善する効果も期待できます。
DCリアクトルとは
DCリアクトルはインバータの内部、交流から直流へ整流(コンバータ)したあとの回路に挿入されます。
変換直後の電流に残るリップルを減衰し、直流電流を生成します。また、電源側の電圧変動を抑える効果もあります。
外部サージへの保護機能はありませんが、内部の電流の安定化に特化しています。ACリアクトルと比べて、小型かつ安価に力率を改善できるのもメリットです。
両者の違いと使い分け
ACリアクトルとDCリアクトルの違いは、設置場所と電流の制御対象にあります。
ACリアクトルは、外部からのサージ保護やノイズ抑制に優れる反面、サイズが大きく電圧降下が生じやすいという側面があります。一方で、DCリアクトルは外部保護の機能こそありませんが、省スペースかつ低コストで電流を安定させられるのが利点です。
どちらを選ぶかは、予算・設置スペース・求められるノイズ基準によって変わります。最近では、電力品質をより高めるために、両方を併用する構成も増えています。
3. トランスとの比較
リアクトルとよく似た磁性部品に、トランス(変圧器)が挙げられます。材料や形状に共通点は多いですが、回路での目的は異なります。ここでは、両者の違いについて解説します。
リアクトルとトランスの違い
両者はそれぞれ、回路の中で異なる目的を持っています。
トランスの役割は「電圧の変換」であり、電圧を変えながら次段の回路へエネルギーを伝達します。 対するリアクトルは、電流の乱れを自ら吸収・放出し、波形を整えることで電力品質を安定させるために用いられます。
一見すると似た部品ですが、回路設計における機能は対照的です。
電圧変換か電流安定か
トランスのメイン機能は、電圧の変換です。高電圧を家庭用の100Vや200Vに降圧するほか、機器内部で必要な電圧へ変換し、絶縁を保ちながら次段へエネルギーを伝達します。
一方でリアクトルは、電圧を変換しません。通過する電流の波形を整え、ノイズを遮断して電力の品質を安定させることが目的です。
巻き線とコアの構造
巻線の数と磁路中のギャップ(隙間)の有無にも違いがあります。
- リアクトル:1つのコアに1つの巻線を持ち、自己誘導作用を利用します。大電流による磁気飽和を防ぐため、コアにギャップを設けるのが特徴です。
- トランス:1つのコアに2つ以上の巻線を持ち、相互誘導作用を利用します。磁力を逃がさず効率よく伝えるため、コアにギャップは作りません。ただし、フライバックコンバータのようにトランスの二次側を利用してエネルギーを放出する用途ではギャップを設けます。

近年は省スペース化のため、両者の機能を一つにまとめた「コイル+トランス一体型」も採用されています。
4. 選定時に意識すべきポイント
産業機器や再生可能エネルギー設備では、リアクトルの選定がシステム全体の性能を左右します。ここでは選定時に押さえておくべき3つのポイントを解説します。
国際規格と高調波抑制への対応
国際規格(IEC 61000-3-2など)に準拠するには、PFC(力率改善)回路などの採用が欠かせません。変換効率を高めるには、インダクタンス値が精密に調整された専用設計が求められます。
熱対策と小型化の両立
大電力を扱うリアクトルは発熱が避けられないため、小型化には熱設計が不可欠です。しかし、サイズを絞るほど放熱面積が減り、温度管理が難しくなるという課題があります。
この問題を解決するには、低損失なコア材の選定や放熱構造の工夫が重要です。高品質のダストコアやフェライトコアの活用、高熱伝導のポッティング構造などの手法があります。
形状別のバリエーション
設置環境や要求スペックに合わせて、最適な形状を選ぶことも重要です。代表的な3つの形状を見てみましょう。
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| プレーナー型 | ポッティング型 | ケーシング型 |
- プレーナー型:基板パターンや平角線を利用し、低背型リアクトルを実現します。高周波動作時のロスを抑えられるため、高効率化に向いています。
- ポッティング型:コアと巻線を樹脂で封止した構造です。振動や衝撃に強く、高放熱と高い耐環境性を誇ります。
- ケーシング型:金属や樹脂のケースに収めてポッティングした構造です。堅牢性とノイズシールド効果に優れています。
性能はもちろん、使用環境に合った形状を選ぶことも大切です。最適なパッケージ選びが、製品の信頼性を高めるカギになります。
5. まとめ
リアクトルは、電流の急激な変化を抑え、設備の安定稼働を支える重要な部品です。電圧変換を担うトランスとともに、電子機器の中核を守っています。
最新の電子機器開発では、厳しい国際規制への対応に加え、大容量化・小型化という相反する要求が重なっています。そのため、既製品のカタログスペックだけでは解決できない場面も増えています。
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