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インピーダンスとは? 計算方法から交流回路の設計、コイルの選び方まで解説

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インピーダンスとは? 計算方法から交流回路の設計、コイルの選び方まで解説

電子部品を使った回路設計では、コイルやコンデンサを含む交流回路の挙動を抵抗値だけでは読み切ることができません。どの周波数でどの電流が流れ、どこで損失やノイズが出るのか。これを正しく予見できる鍵となるのが、インピーダンスです。

本記事では、インピーダンスの基本的な性質から計算方法、コイルを選ぶ際のポイントまで解説します。

1. 基本の定義と性質

直流と交流では電流の流れ方が根本的に異なり、その違いがインピーダンスという概念を生み出しています。インピーダンスとは何か、まずは基本の性質から見ていきましょう。

インピーダンスの成り立ち

電気回路には直流と交流の2種類があり、それぞれ性質が異なります。乾電池に代表される直流は電圧が一定で、電流は常に一方向へ流れます。一方、コンセントに代表される交流は電圧と電流が時間とともに周期的に変化し、プラスとマイナスの両方の値をとります。

直流回路では、電流の流れにくさを示す値は抵抗だけで十分です。しかし交流回路では事情が変わります。コイルやコンデンサが加わると、電流の流れ方はそれぞれの特性によって変化するため、抵抗だけでは全体を表せません。そこで登場するのがインピーダンスです。抵抗・コイル・コンデンサの3つの作用をひとつの数値にまとめて表します。単位は抵抗と同じΩ(オーム)です。

リアクタンスが電流に与える影響

インピーダンスは、抵抗成分とリアクタンス成分という2つの性質から成り立っています。リアクタンスとは、コイルやコンデンサの交流に対する電流の流れにくさを表す指標のことです。意味合いは抵抗と同じですが、大きく異なるのは周波数によって大きさが変わる点にあります。

一般的にリアクタンスは記号Xで表します。このコラムではコイルのリアクタンスをXL、コンデンサのリアクタンスをXCと書くことにします。XLを誘導性リアクタンス、XCを容量性リアクタンスと呼びます。リアクタンスを周波数f、コイルのインダクタンスL、コンデンサの静電容量Cを用いて表すと、次のように書くことができます。

数式1
数式2

つまり、コイルのリアクタンスは周波数に比例して大きくなり、コンデンサのリアクタンスは周波数に反比例して小さくなります。コイルは周波数が高くなるほど電流を通しにくくなります。コンデンサはその逆で、周波数が高いほど電流を通しやすくなります。抵抗は周波数に関わらず一定で、通過した電気エネルギーを熱に変えます。この三者の性質の違いが、部品の絞り込みや回路設計の出発点になります。

リアクタンスXの周波数依存性
リアクタンスXの周波数依存性

電圧と電流の位相差

交流では電圧と電流が波のように変化しますが、コイルやコンデンサが回路に入ると、電圧の波と電流の波のタイミングがずれます。これを位相差といいます。

コイルを含む回路では電流が電圧より遅れて変化し、コンデンサを含む回路では電流が電圧より早く変化します。抵抗だけの回路では、このズレは生じません。コイルとコンデンサはエネルギーを一時的に蓄えて回路に戻す性質があるため、電圧と電流のタイミングがずれるのです。
理想的なコイルは電流が電圧に対して90°遅れ、コンデンサは90°進みます。コイルの場合を図にすると下のようになります。
現実的にはコイル自身の抵抗成分や容量成分により、位相差は90°よりも少し小さな値をもちます。位相差の90°からのズレ量は、損失の大きさを間接的に表しており、コイルの性能を簡単に確認する手段ともなります。

コイルの電圧と電流の位相差
コイルの電圧と電流の位相差

この位相差を無視したまま設計を進めると、電力の損失を正確に見積もれず、回路の動作予測も外れます。交流回路では、電流や電圧の大きさだけでなく、タイミングのズレもあわせて管理することが大切です。

2. インピーダンスの求め方

概念を理解したら、次は計算方法を確認しましょう。実際の回路では複数の素子が組み合わさるため、各素子の抵抗やリアクタンスを合成する必要があります。また、理想コイルはリアクタンス成分しか持たないものの、現実のコイルは抵抗成分もリアクタンス成分も持つため、同様にインピーダンスを考える必要があるのです。

現実のコイル

コイルは周波数が高くなるほどリアクタンスが高くなり電流を通しにくくなりますが、その度合いはインダクタンスで決まります。インダクタンスが大きいコイルほど、同じ周波数でもより強く電流を妨げます。

現実のコイルは、誘導性リアクタンスだけでなく、巻線抵抗、表皮効果等の高周波抵抗、巻線間で生じる容量成分があるため、コイルだけで構成される回路であっても、RCを含む等価回路が解析に用いられます。いくつかの等価回路が設定されますが、RLの直列回路にCを並列につないだ等価回路やRCL直列回路が適用されることが多いです。LCRメータやインピーダンスアナライザ等の測定器では、等価回路を設定し、各成分が自動で計算されます。

合成インピーダンスの算出方法

回路に複数の素子が含まれる場合、それぞれのインピーダンスを合成して全体の値を求めます。直列接続では各素子の値をそのまま足し合わせ、並列接続では逆数を合算してから再び逆数に戻します。

「直列は足し算、並列は逆数」という感覚を先につかんでおくと、回路の見通しが立てやすくなります。実務では複素数を含む計算になるため、回路シミュレーターを活用して確認するのが一般的です。

交流回路では、電圧や電流が位相を持つ正弦波で表されるため、インピーダンスは複素数として扱い、実数のスカラー和ではなく複素数として合成する必要があります。これを図示的に説明するために複素平面のベクトルを使うことにします。複素平面では横軸を実部、縦軸を虚部とします。コイルを想定して、インピーダンスの大部分は誘導性リアクタンスXLから成り、わずかに容量性リアクタンスXCと抵抗Rをもつものとすると、下図のイメージが成り立ちます。θは実部とインピーダンスが成す角度であり、先述の位相差に相当します。すると、誘導性リアクタンスは位相差90°が理想なので縦軸の正の方向に、容量性リアクタンスは位相差-90°が理想なので、縦軸の負の方向に向くわけです。抵抗成分は位相差0°だから、横軸の正の方向を向きます。

複素平面におけるインピーダンス・リアクタンス
複素平面におけるインピーダンス・リアクタンス

インピーダンスはXLXCの合成リアクタンスと、抵抗成分Rのベクトル和をとり、次式が得られます。

数式6

ここで、理想コイルの場合を考えるとθは90°なので、インピーダンスZは縦軸の正の方向を向き、抵抗成分は0となります。この結果は先に述べた「位相差の90°からのズレ量は、損失の大きさを間接的に表す」ことを理解する方法の1つです。もし、XL=XC、すなわち誘導性リアクタンスと容量性リアクタンスが等しい場合は、抵抗Rだけが残り、Z=Rとなることがわかります。これは位相差θ=0、すなわち電圧と電流波形が時間軸で重なっている場合を意味します。後述する自己共振に該当します。

回路全体での考え方

部品単体のインピーダンスだけを見ても、回路全体の動作は見えません。電源の出力インピーダンス、負荷のインピーダンス、そして配線や基板のインダクタンス成分が組み合わさって、はじめて全体像が把握できます。

イメージとしては、水道管の太さと水圧の関係に近いものです。管のどこかが細くなれば全体の流れが変わるように、回路のどこかのインピーダンスが変わると全体の動作に影響します。回路全体のバランスを俯瞰する視点が、設計の質を高めます。

3. 回路設計のポイント

数式の上では問題なく見える回路でも、実装段階で性能が出ないことがあります。コイルを含む回路の設計では、特有の注意点を把握しておく必要があります。設計に関わる3つの観点を確認しましょう。

自己共振周波数の影響

現実のコイルは巻線と巻線の間に微小な静電容量が存在し、ある周波数を境にコイル自身がコンデンサのように振る舞い始めます。この境界となる周波数を自己共振周波数(SRF)といいます。先に説明したように、XL=XCの場合はZ=Rが成り立ち、これは位相差θ=0に該当します。これが自己共振であり、その周波数は次式で与えられます。

数式4

実際のコイルの周波数特性を測定した例を下図に紹介します。インピーダンスアナライザという測定器で、インピーダンスZ、リアクタンスX、位相差θ、抵抗成分Rを測定しています。低周波では、位相差θが90°に近い理想コイルとして振る舞うため、Zは、ほぼXに等しくなっています。周波数が高くなると抵抗成分Rが立ち上がり、位相差θ=0°でZ=R, X=0となる周波数が存在することがわかります。これがfSRFです。周波数 f < fSRFではθ>0なので、誘導性リアクタンスが優勢です。一方、 f < fSRFではθ<0なので、容量性リアクタンスが優勢になっています。

自己共振周波数
自己共振周波数

以上のことから、コイルとして機能するのは、SRFより低い周波数帯に限られます。SRFを超えた帯域では、フィルタや高周波電源回路において設計意図とは異なる動作が生じることがあります。

部品のデータシートにはSRFが記載されているため、使用する周波数帯がSRFを十分に下回っているかを採用段階でチェックしましょう。

内部抵抗が生む損失

コイルには、インダクタンス以外に抵抗成分も含まれています。巻線の導体抵抗に由来する直流抵抗(DCR)がその代表で、電流が流れると熱として損失が生じます。また、磁性材料のコアが交流磁界によって生じるコアロスや、高周波帯で電流が導線表面に集中する表皮効果も、損失を増加させる要因です。これらの損失は周波数が高くなるほど顕著になります。

以下に代表的な損失の要因をまとめます。

  • DCR(直流抵抗):大電流用途における装置全体の熱設計への影響
  • コアロス(鉄損):スイッチング素子の高周波化に伴う損失の増大
  • 表皮効果:高周波における実効抵抗値の上昇

損失を抑えたい用途では、低損失コアの採用や巻線断面積の拡大、リッツ線の適用、放熱材料の適用といった対策が検討されます。

温度による特性の変化

コイルのインピーダンス特性は、温度によって変化します。コイルに使用される磁性材料の透磁率は温度依存性を持つため、動作温度が上昇するとインダクタンス値が変化し、設計時の特性からずれが生じることがあります。

高温環境での連続動作や、大電流による自己発熱が生じる用途では、この影響が出やすくなります。起動・停止を繰り返す機器では、熱サイクルへの耐性も判断材料に含める必要があります。スペック表の定格値だけでなく、実際の動作環境を踏まえたマージンを見込むことで、設計上の安全性を担保できます。

4. コイルの選定基準

インピーダンスの特性を踏まえた上で、コイルをどのように選ぶかを整理しましょう。スペック確認の観点は複数ありますが、優先度を把握しておくことで、判断が明確になります。

電流容量の確認

コイルを選ぶうえで最初に見ておきたいのが電流容量です。定格電流を超えた状態が続くと、DCRによる発熱が増大し、やがてコアが磁気飽和に達します。磁気飽和とは、コアがそれ以上磁束を通せなくなった状態のことです。この状態になるとインダクタンスが急激に低下し、フィルタや保護回路としての機能が損なわれます。

照合すべきスペックは「定格電流」「飽和電流」「DCR」の3つです。特に飽和電流については、回路の最大電流に対して十分な余裕を持たせることが重要です。

発熱の状態を見る

電流が流れると、損失は熱に変わります。そのため、放熱しやすい構造かどうか、熱に強い材料かどうかも確認しておきたいポイントです。放熱については熱伝導シートや樹脂封止構造など発熱を抑えやすい部品や構造を採用することで、長期的な安定性を確保しやすくなります。コイルの耐熱性については、通常UL規格で定められた絶縁グレードにより規定されています。

用途に合った形状を選ぶ

コイルの形状は、実装スペース・放熱性・優れた高周波特性などの要求事項によって変わります。

代表的な形状の特徴は次のとおりです。

  • プレーナー型:低背で高周波特性に優れ、基板への密着実装に向く構造
  • ポッティング型:樹脂封止による放熱性・防湿性に優れ、産業機器や車載用途に多い形状
  • トロイダル型:漏れ磁束の少なさとノイズ抑制に適した構造

量産品で対応しきれない仕様、たとえば特定の周波数帯での低損失化や特殊な放熱構造が必要な場合は、フルカスタムのコイルを視野に入れることも選択肢の一つです。

5. まとめ

インピーダンスは、交流回路における電気的な流れにくさを表す重要な考え方です。単なる数値計算だけでなく、周波数特性や温度変化、自己共振などの物理現象まで含めて捉えることが、信頼性の高い回路設計につながります。

回路設計の現場では、汎用品だけでは対応しにくい条件に出会うことも少なくありません。そうした場合は、要件に合わせたカスタム品を活用することで、開発期間の短縮や性能向上に結びつくことがあります。

当社では、お客様の設計ニーズに合わせたコイル・リアクトル・トランスのカスタム対応を承っております。車載、ロボット、データセンタなど多岐にわたる採用実績をもとに、短納期でのフルカスタム対応や、自社設備による詳細な製品評価も可能です。

製品の仕様選定にお悩みの方や、特定の性能を実現したい方は、ぜひいちどお問い合わせください。

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