%{FACEBOOKSCRIPT}%
TOP > 電源・磁性部品チョークコイルインダクタリアクトル > インダクタンスとは何か? コイルの種類から測定方法、設計の基本について解説

インダクタンスとは何か? コイルの種類から測定方法、設計の基本について解説

  • LINEで送る
  • このエントリーをはてなブックマークに追加
インダクタンスとは何か? コイルの種類から測定方法、設計の基本について解説

電子回路は直流だけではなく、交流や脈流のように「時間的に変化する電流」を扱う必要があります。抵抗素子が電流の流れを制御するのと同様、コイルは交流や脈流に対して抵抗として振る舞います。この性質を利用すると、電流の急激な変化を抑制してノイズを低減したり、他の素子と組み合わせて出力電圧を制御したりできます。 抵抗素子のRと同じように、コイルの特性を代表する指標がインダクタンスLです。コイルがどう振る舞うかを理解するには、まずこの指標の意味を押さえておく必要があります。

本記事では、インダクタンスの基本から測定方法、設計時のポイントまで解説します。

1. インダクタンスのはたらき

ここでは、コイルを電子回路の1部品という見方で扱い、電流が作る磁界については別のところで解説します。コイルを電子回路の立場から見ると、起電力-L(di/dt)の電池とみなすことができます。

直流LR回路 直流LR回路におけるコイルの電流1 直流LR回路におけるコイルの電流2
直流LR回路 直流LR回路におけるコイルの電流

もっとも簡単な例として、図のように直流の電池に抵抗RとインダクタンスLのコイルを直列につないだ回路を考えます。回路の方程式は、キルヒホッフの法則により

数式1

と書けるので、これを解くと次式が得られます。

数式2

t=0で電源をonにした瞬間は電流が流れず、時間とともに指数関数的に電流が増大してV/Rに収束します。よって、コイルの効果によって電流の立ち上がりは緩やかになり、時間が十分に経過すると、この回路は単なる抵抗の直列回路と同等になるという意味です。
コイルの起電力v(t)は、電源をonにした瞬間に電源の電圧と同じ値で立ち上がり、時間とともに指数関数的に現象して0に収束します。これらの時間変化は抵抗RとインダクタンスLの比に依存しており、抵抗が一定ならばインダクタンスが大きいほど立ち上がりのスピードが遅くなります。これがインダクタンスの回路上の性質であり、急激な電流変動を抑制する機能があることがわかります。もしこの回路にコイルが入っていなければ、電源onと同時にV/Rの電流が流れることになるわけです。

コイルの誘導起電力とインダクタンス

先に、コイルを電子回路の立場から見ると、起電力-L(di/dt)の電池とみなすことができると説明しました。このコイルに発生する起電力のことを誘導起電力といいます。コイルに流れる電流が時間的に変化すると、その変化を妨げる方向に電圧が発生します(レンツの法則)。誘導起電力にdi/dtが含まれるのはそのためです。この現象は急激な電流変動を抑制する機能として働きます。この現象を物理的に説明するためには、磁場の考え方を導入することが必要ですが、ここでは電子回路の立場からコイルを見ているので、割愛して、ノイズを低減したり、他の素子と組み合わせて出力電圧を制御することに役立つことを触れておきます。

インダクタンスの単位

インダクタンスの大きさを表す単位には、ヘンリー(H)が用いられます。1秒間に1アンペアの割合で電流が変化し、1ボルトの起電力が生じる状態を1ヘンリーと定義します。実用的な単位としては、マイクロヘンリー(μH)やナノヘンリー(nH)が多く使用されます。

2. コイルの種類と特徴

用途や求める性能に応じて、コイルの構造や使用される材料は多岐にわたります。それぞれのコイルが持つ利点を把握し、適切な選定を行うための指針を確認しましょう。

鉄心(コア)の材質による性能の違い

コイル内部に挿入される鉄心(コア)は、インダクタンスの大きさや磁束の通りやすさを左右する重要な部位です。

商用周波数(50Hz/60Hz)の電源で使用するコイルのコアには一般的に珪素鋼板が使用されます。電源の動作周波数や電流の大きさに応じて、ダストコア、アモルファスコア、フェライトコアなどコアの材料を選定します。例えば、フェライトコアは高周波特性に優れており、通信機器やスイッチング電源回路に広く普及しています。コアを使わない空芯タイプのコイルは、インダクタンスの電流依存性がきわめて低いため、高精度な信号処理や高周波信号回路に適しています。

動作周波数や電流の大きさに応じてコアを選ぶことで、回路の安定性やノイズ特性を改善できます。

構造による性能の違い

近年の回路の高周波化、高密度実装や、振動・湿気・温度といった過酷な環境下での使用に対応するため、特殊な構造を持つコイルが増えています。同じインダクタンス値でも、構造の違いによって実装スペース・信頼性・コストが変わるため、設計目的に応じた選択が欠かせません。

代表的な分類は次に示すとおりです。

  • プレーナー型(基板パターン型):銅パターンで形成した薄型・低背化向けの基板内蔵構造
  • ポッティング型(樹脂封止型):樹脂でコイルを封止した耐振動・耐湿仕様の構造
  • ケーシング型(金属ケース型):金属ケースと熱伝導性樹脂で発熱を抑えた大電流・放熱対応の構造

構造の選択は、部品単体の性能だけでなく、設計スペースや組み込み環境にも影響します。

用途ごとの使い分け

コイルは役割ごとにさまざまな派生形が使われており、設計目的に応じて選択肢があるのが特徴です。電力変換回路やノイズ対策、省スペース化といった用途に合わせて適切な種別を選ぶことで、設計精度と実装の合理性を両立できます。

用途に応じた分類を整理すると、主に次のように分けられます。

  • リアクトル:電力変換回路で電圧変動を安定させるコイル
  • チョークコイル:高周波・スイッチングノイズを除去するコイル
  • トランス一体型コイル:変圧と絶縁を兼ねた省スペース設計のコイル、主にLLC共振回路に使用

大電流を扱う場面では、熱損失を抑えるためにケーシング型などの構造を採用し、放熱対策を施すことが一般的です。トランス機能を併せ持つ一体型の採用は、設計スペースの削減にも有効です。

3. インダクタンスの測定方法

設計どおりに動作するかを確認するには、正確なインダクタンスの計測が不可欠です。ここでは、代表的な手法を解説します。

LCRメータ、インピーダンスアナライザの利用

もっとも一般的な測定手法は、LCRメータなどの専用測定器を使用することです。交流電圧を印加し、交流抵抗、および電圧と電流の位相差を直接測定データとして、インダクタンスの値を算出します。

測定時の周波数や電圧設定によって数値の信頼性が変化するため、部品のデータシートに記載された条件と一致させることが検証の基本となります。実際の回路では交流や脈流に直流電流を重畳させて使用されることが多いため、LCRメータやインピーダンスアナライザを定電流電源と組み合わせ、インダクタンスの電流依存性を測定する必要があります。コモンモードチョークコイルでは、インダクタンスの周波数依存性を測定します。

インダクタンスの電流依存性(直流重畳特性) インダクタンスの周波数依存性
インダクタンスの電流依存性(直流重畳特性) インダクタンスの周波数依存性

波形を用いた確認

オシロスコープを使用して、電流の立ち上がり波形からインダクタンスを推定する方法もあります。電圧を加えた際の電流波形の傾きを観測し、簡易的な計算で数値を確認しますが、インダクタンスを測定するというよりは、実際の回路に近い状態での過渡現象を観測できるため、インダクタンスが減少して波形が歪む電流値を視覚的に捉えたい場面で特に有効です。

4. 設計のポイント

目標とするインダクタンスを得るためには、電線の巻き数や素材、磁気回路といった物理的なパラメータを制御することが必要です。ここでは、設計段階で考慮すべき要素を解説します。

巻き数とインダクタンス値の関係

インダクタンスは、巻き数の2乗に比例して増大するという性質を持ちます。巻き数を増やすほど高い値が得られますが、導線の抵抗による損失も増加しやすくなります。よって、コアの材質・大きさと巻き数の両方でバランスよく目的のインダクタンスを得ることが重要です。

巻線の密度を高めることで限られたスペースでも効率的に値を稼げますが、線間容量が増大するので、低い周波数でインダクタンスが急降下するデメリットがあります。巻き方を工夫することで線間容量を減らすことも可能ですが、まずは動作周波数に近いポイントでインダクタンスが急降下しないように設計することが重要です。

鉄心(コア)による特性の違い

コアの選択は、コイルの性能を決定づける大きな要素です。コア材質によって得られるインダクタンスの値が変わるだけでなく、前述の直流重畳特性もまったく異なるものになります。

例えば、合金粉末を用いたダストコアは直流重畳特性に優れ、渦電流損失も小さいため、電力変換効率の向上に寄与します。使用する周波数帯において損失が少ない材料を選ぶことで、発熱や温度上昇を抑えた設計が実現します。ダストコアとフェライトコアをセットで使用して、重畳電流が0A時のインダクタンスが大きく、直流重畳特性も優れたコイルを設計するなど、コアの活用にはさまざまな手段があります。

5. まとめ

インダクタンスは、電子機器の性能を支える根幹的なパラメータです。誘導起電力の理解に加え、コアや構造の選定、正しい測定手法の確立が、高品質な回路設計に直結します。各部材の特性を深く掘り下げ、動作環境や用途に応じた設計を積み重ねることで、製品の付加価値を高めることが可能です。

当社では、コイルやリアクトル、トランスのカスタム対応を行っております。電子部品や磁性材料の選定、製品評価に関するご相談がございましたら、ぜひお気軽にお問い合わせください。

  • LINEで送る
  • このエントリーをはてなブックマークに追加