絶縁トランスとは? 仕組みから非絶縁型との見分け方、選定ポイントまで解説

電源設計や装置開発の現場で、「一次、二次間の絶縁が必要」といわれたことはないでしょうか。その解決策の1つとして絶縁トランスがあります。名前は聞いたことがあっても、なぜ絶縁が必要なのか、非絶縁型トランスと何が違うのかを説明できる方は多くありません。
本記事では、絶縁トランスの基本的な仕組みから非絶縁型との見分け方、選定ポイントまでを解説します。
- 1. 絶縁トランスの仕組み
- 1-1. 電磁誘導で電力を伝える構造
- 1-2. 絶縁トランスが持つ3つの機能
- 1-3. 絶縁距離と安全規格の基本
- 1-4. 絶縁材料と耐熱クラス
- 2. 非絶縁型との見分け方
- 2-1. 構造から判断する
- 2-2. 回路方針を手がかりに判断する
- 2-3. 安全規格から判断する
- 3. 絶縁トランスの選定ポイント
- 3-1. 電圧・電流・容量(VA)の整理
- 3-2. 絶縁性能の確認
- 3-3. 安全規格の確認
- 3-3. 使用環境の確認
- 4. まとめ
1. 絶縁トランスの仕組み
一般的に絶縁トランスというと、一次側巻線と二次側巻線の巻数比が1:1で電圧値を変えずに絶縁だけを目的としたものを指します。
ここでは、まずトランスの動作原理と、絶縁トランスが他にどのような機能を持つかを確認しましょう。
電磁誘導で電力を伝える構造
トランスは、2つ以上の巻線と鉄心(コア)で構成される電気部品です。一次側巻線に交流電圧を加えると磁束が発生し、コアを通して二次側巻線を磁束が通過し、電圧を誘起します。この現象を電磁誘導といい、電気的な接続がなくても電力を伝えられるのはこの原理によるものです。
一次側と二次側は導線で直接つながっていないため、両者は電気的に絶縁された状態になります。この分離状態をガルバニック絶縁といい、一次側の異常電圧が二次側に直接伝わることを防ぎ、接続先の機器や回路を保護できます。
絶縁トランスが持つ3つの機能
絶縁トランスを採用することで、主に以下の3つの効果が得られます。
- 電気的に絶縁した状態での電力伝達:一次側と二次側は導線で直接つながっていない⇒電気的に絶縁した状態で電力伝達が可能
- 安全性の向上:一次側と二次側が電気的に絶縁されている⇒一次側で発生した異常電圧が二次側に直接伝わることを防ぐ⇒接続された回路や機器を保護しやすくなり安全性を向上
- 電圧変換:一次側と二次側の巻数比を変えることで昇圧/降圧の両方に対応
絶縁距離と安全規格の基本
絶縁トランスでは安全性確保のために、一次側巻線と二次側巻線間に一定の距離を確保する必要があります。この距離には「沿面距離」と「空間距離」があり、適用される安全規格によって、必要な沿面距離と空間距離が規定されています。
また、安全規格には求められる絶縁性能に応じて「基本絶縁」「補助絶縁」「強化絶縁」などの絶縁区分が定められていて、それぞれで必要となる沿面距離や空間距離が異なります。
絶縁材料と耐熱クラス
絶縁トランスでは絶縁材料の耐熱性能も重要になります。部材温度が高くなりすぎると絶縁材料が劣化し絶縁性能の低下や寿命短縮につながるため、使用環境に適した耐熱クラスの材料を選定する必要があります。
2. 非絶縁型との見分け方
絶縁型と非絶縁型の違いは外観だけでは判断できないことが多く、構造や回路方式、適用される安全規格などから総合的に判断する必要があります。具体的な確認方法を整理しましょう。
構造から判断する
もっとも確実な方法は、仕様書や回路図で構造を確認することです。絶縁型は一次側と二次側が電気的に分離しており、電磁誘導によって電力を伝達します。一方で、非絶縁型は一次側と二次側が電気的につながっていて、間に絶縁構造を持ちません。
ちなみに非絶縁型の代表例はオートトランスです。一次側と二次側の巻線の一部を共有しているため、両者が電気的につながった状態になり、ガルバニック絶縁は成立していません。
回路方式を手がかりに判断する
回路方式からも絶縁の有無を読み取れます。フライバック・フォワード・LLC共振・DAB方式はいずれも絶縁型トランスを前提とした構成です。これらの回路方式の場合は絶縁型トランスを採用しています。採用する回路方式を把握しておくことが、絶縁トランスの要否を判断する手がかりになります。
安全規格から判断する
適用される安全規格からも判断することも可能です。製品に適用される安全規格によっては、一次側と二次側の間に絶縁が求められます。その場合は規格で定められた絶縁距離を満たす絶縁構造が必要となるため、絶縁型トランスを採用する可能性が高くなります。
3. 絶縁トランスの選定ポイント
絶縁トランスの選定では、仕様を固める前に押さえておくべき項目があります。以下で解説します。
電圧・電流・容量(VA)の整理
トランス全般の話ですが、まずは一次電圧・二次電圧・電流値を整理します。トランスの容量は一般的にVA(ボルトアンペア)で表され、必要な電圧と電流から算出します。余裕を持たせた設計にすることで、運用中の過負荷トラブルを防ぎやすくなります。
絶縁性能の確認
製品によって求められる絶縁レベルは異なり、「基本絶縁」や「強化絶縁」などの絶縁区分が定められています。そのため、用途に応じた絶縁性能を満たすことが重要です。
安全規格の確認
適用される安全規格も確認しましょう。規格によって要求される絶縁性能や絶縁距離が異なります。規格に適合した製品を選定する必要があります。
使用環境の確認
使用環境も重要なポイントになります。周囲の温度が高い場合は絶縁材料の劣化が進みやすくなるので使用環境に適した製品を選定する必要があります。
4. まとめ
絶縁トランスは、一次側と二次側を電気的につなげないことで異常電力が二次側に直接流れ込むことを防ぐ部品です。また、非絶縁型との違いは外観には現れないため、巻線構成・回路方式・安全規格などを組み合わせることで判断する必要があります。
株式会社尾関では、コイル・リアクトル・トランスのフルカスタム対応と自社内での製品評価を一貫して提供しています。仕様のご相談はお気軽にお問い合わせください。



