放熱材料(TIM)の選び方を解説! シート・ゲル・樹脂の違いと使い分けるポイント

電子機器の高性能化・小型化が進む中で、放熱設計は避けて通れない課題のひとつです。CPUやパワー半導体などの発熱部品を適切に冷却することが設計品質を大きく左右します。そのためには、デバイスとヒートシンクの間に介在する放熱材料の選定が重要になります。
本記事では、放熱材料の基本から、各素材(シート・ゲル・樹脂)の特徴、さらに選定のポイントを詳しく解説します。「何を基準に選べばよいか分からない」と迷われる方はぜひ参考にしてください。
- 1. 放熱材料(TIM)とは?
- 1-1. 空気層の排除とメカニズム
- 1-2. 熱伝導率と熱抵抗
- 2. 放熱材料の種類と特徴
- 3. 放熱材料の選び方・使い分けのポイント
- 3-1. メンテナンス性を重視する場合
- 3-2. 部品への負荷抑制を求める場合
- 3-3. 防水・防塵・耐振を求める場合
- 3-4. コストと量産スピードを追求する場合
- 3-5. 薄さを求める場合
- 4. まとめ
1. 放熱材料(TIM)とは?
放熱材料(TIM:Thermal Interface Material)は、発熱部品と冷却部品(ヒートシンクなど)の間に塗布または挟み込み、熱を効率よく冷却部品に渡すための材料です。その主な役割は、微細な隙間(=空気層)を埋めることで熱抵抗を低減し、熱を効率的に外部へ逃がすことにあります。
空気層の排除とメカニズム
発熱する半導体部品の表面やヒートシンクの表面は、一見滑らかに見えても、ミクロレベルでは凹凸があります。これらの凹凸の間にできる空気層は、熱の移動を妨げる大きな要因となります。
放熱材料は、この凹凸に密着して空気層をなくすことで、部品とヒートシンクの間に熱を通しやすい道をつくる役割を果たします。熱源とヒートシンクが一体化され、効率よく熱が流れるようになるため、デバイスの温度上昇が抑制され、製品の性能維持や寿命延長につながります。
熱伝導率と熱抵抗
放熱材料を選定する上で、「熱伝導率」と「熱抵抗」という2つの重要な指標を理解しておく必要があります。
- 熱伝導率(Thermal Conductivity):
物質が熱を伝える能力を示す指標です。単位はW/(m・K)で表され、数値が大きいほど熱を伝えやすいことを意味します。放熱材料自体の性能を示す数値として用いられます。 - 熱抵抗(Thermal Resistance):
熱の流れに対する抵抗の度合いを示す指標です。単位はK/Wで表され、数値が小さいほど熱が伝わりやすいことを意味します。放熱材料を実際に使用した際の、熱源とヒートシンク間の温度差ΔTと伝わる熱流量Pの比率ΔT/Pで、システムの放熱性能を総合的に評価する際に重要となります。
一般的に、熱伝導率が高い材料は熱抵抗が低くなりますが、実際の熱抵抗は材料の厚みや密着性、接触面積など、使用環境によって大きく変動します。そのため、単に熱伝導率の数値だけでなく、総合的な熱抵抗を考慮して選定することが重要です。
2. 放熱材料の種類と特徴
放熱材料にはさまざまな種類がありますが、ここでは主に、代表的な「放熱シート」「放熱ゲル」「放熱樹脂」の3つに焦点を当て、その特徴とメリット・デメリットを解説します。
放熱シート

「作業効率と品質の安定性を両立したい」という現場で多用されるのが放熱シートです。シリコンやアクリルなどをベースに、熱伝導性の高いフィラー(充填剤)を配合してシート状に成形したものです。
- メリット:
- 加工性が高く、複雑な形状にも対応しやすい。
- 取り扱いが容易で、作業性がよい。
- 均一な厚みを確保しやすく、安定した性能が得られる。
- 再利用やメンテナンス時の交換が比較的容易。
- デメリット:
- 部品表面の凹凸に対する追従性がゲルやグリースに劣る場合がある。
- 圧縮応力によって部品に負荷がかかる場合がある。
使用事例:
CPU、GPU、パワー半導体、LED照明、車載ECU、通信機器など幅広い分野
放熱ゲル

「部品へのストレスを極限まで減らしたい」「凹凸が多くシート形状での対応は難しい」という現場で重宝されるのが、放熱ゲルです。液体状のシリコンやウレタンなどをベースに、熱伝導性の高いフィラーを配合した、ペースト状または半固形状の材料で、非硬化型と硬化型があります。
- メリット:
- 非常に柔らかく、部品表面の凹凸に高い追従性を示す。
- 低い圧縮応力で密着するため、部品への負荷が少ない。
- 非硬化型は再作業やメンテナンスが容易。
- 硬化型は一定以上の弾性率において、振動や衝撃に対する耐久性がある。
- デメリット:
- 非硬化型は、時間の経過とともに材料が分離(ブリード)したり、乾燥したりする可能性がある。
- 塗布作業が厚み管理(塗布量管理)が必要で、自動化には設備投資が必要な場合がある。
- 硬化型は一度硬化すると取り外しが困難。
使用事例:
車載電子部品、産業機器、電源モジュール、通信基地局など、高い密着性や低応力が求められる用途
放熱樹脂

「過酷な環境下で部品を強固に保護したい」という設計に欠かせないのが放熱樹脂です。エポキシやシリコンなどの樹脂に熱伝導性の高いフィラーを配合した樹脂材料で、硬化させることで接着性と放熱性を両立させています。多くは液状で充填され、熱やUVなどで硬化します。
- メリット:
- 硬化後は高い接着力と機械的強度を持つ。
- 振動や衝撃に強く、耐久性に優れる。
- 防水・防塵効果も期待できる。
- 熱源とヒートシンクを固定する役割も果たせる。
- デメリット:
- 一度硬化すると取り外しや再作業が非常に困難。
- 硬化プロセスが必要で、生産工数に影響を与える場合がある。
- 熱応力による硬化時の収縮により、部品にストレスがかかる可能性がある。
使用事例:
LEDパッケージ、パワーモジュール、車載ECUのポッティング、接着固定が必要な電子部品
その他の放熱材料
上記の他に、以下のような放熱材料も存在します。
- 放熱グリース(ペースト):
もっとも古くから使われている放熱材料の一つ。熱伝導率は高いが、ポンプアウト現象(熱サイクルによる材料の移動)や乾燥の問題があるため、長期信頼性が求められる用途では注意が必要です。 - 熱伝導性接着剤:
放熱樹脂と類似していますが、特に接着力を重視した材料です。部品の固定と放熱を同時に行いたい場合に有効です。 - 相変化材料(PCM:Phase Change Material):
特定の温度で固相から液相へ相変化融解(PCM:Phase Change Melting)することで、高い熱伝導性と優れた密着性を発揮します。塗布時はシート状で、動作温度に達すると半液状化します。
3. 放熱材料の選び方・使い分けのポイント
適切な放熱材料を選定するためには、単に熱伝導率の数値だけでなく、使用環境、求められる機能、コスト、量産性など、多角的な視点から検討することが重要です。ここでは、具体的な選定のポイントを解説します。
メンテナンス性を重視する場合
- 推奨材料:放熱シート、非硬化型放熱ゲル
試作段階での部品交換や、製品のライフサイクル中の修理・メンテナンスが想定される場合は、取り外しが容易な放熱シートや非硬化型放熱ゲルが適しています。特に放熱シートは、貼り替えるだけでメンテナンスが完了します。
部品への負荷抑制を求める場合
- 推奨材料:放熱ゲル(特に低硬度タイプ)
デリケートな半導体や微細な構造を持つ部品など、圧縮応力による変形や破損を避けたい場合には、低硬度タイプの放熱ゲルを選びましょう。ゲルは非常に柔らかく、極めて低い圧力で表面の凹凸に追従して密着します。部品への物理的なストレスを最小限に抑えられるため、不具合のリスクを低減し、製品を長く安定して動作させることにつながります。
防水・防塵・耐振を求める場合
- 推奨材料:放熱樹脂(硬化型)、一部の放熱シート(耐環境性タイプ)、硬化型放熱ゲル
車載機器や産業用ロボットなど、激しい振動や温度変化にさらされる製品には、硬化してガッチリと固定できる放熱樹脂が適切です。接着層が物理的なガードとなり、外部の衝撃から内部を守る役割も果たしてくれます。
このほかに硬化型ゲルや耐環境性を持つ放熱シート、部品の固定と放熱を同時に行いたい場合には熱伝導性接着剤も有効な選択肢です。
コストと量産スピードを追求する場合
- 推奨材料:放熱シート、放熱ゲル
大量生産を行う製品では、実装にかかる工数やタクトタイムが重要な選定基準となります。あらかじめカットされた放熱シートは、貼り付けるだけで安定した品質を確保できるため作業効率に優れています。また、放熱ゲルはディスペンサーなどを用いた自動塗布に対応しており、初期投資は必要なものの、高速かつ精密な処理による高い量産効果が得られます。
薄さを求める場合
- 推奨材料:放熱シート(極薄タイプ)、放熱ゲル
スマートフォンのように極限まで小型・薄型化が進む電子機器では、わずかな隙間に収まる極薄放熱シートや放熱ゲルが役立ちます。省スペース化と高い冷却効率を同時に実現したい設計の場合は、有効な選択肢です。
4. まとめ
熱伝導率の数値だけでなく、メンテナンス性、部品への負荷、耐環境性、コスト、量産性、薄さといったさまざまな要素を総合的に考慮することで、最適な放熱材料を見つけることができます。
適切な放熱材料の選定は、製品の性能向上、信頼性確保、そしてコスト削減に直結する重要なプロセスです。「放熱材料を探している」「特定の用途に最適な材料を知りたい」といったお悩みをお持ちでしたら、ぜひ当社にご相談ください。
電子部品や磁性材料の販売を通じて培った知見を活かし、お客さまの製品開発をサポートいたします。

