DC/DCコンバータとは? 仕組み・種類・選定ポイントをわかりやすく解説

産業機器や電子回路の設計において、安定した電源供給を支える電源部品は重要な役割を果たします。その中でも、基板上の各種パーツへ適切な電圧を届ける役割を担うのが「DC/DCコンバータ」です。
本記事では、DC/DCコンバータの基礎知識や動作原理をはじめ、主な種類から選定時の注意点までわかりやすく解説します。
- 1. DC/DCコンバータとは
- 1-1. 役割と主な用途
- 1-2. AC/DCコンバータとの違い
- 1-3. リニアレギュレータとの違い
- 2. 仕組み
- 2-1. 基本回路構成とスイッチング制御
- 2-2. 電圧を昇圧・降圧・反転する原理
- 3. 主な種類
- 3-1. 降圧型(バックコンバータ)
- 3-2. 昇圧型(ブーストコンバータ)
- 3-3. 昇降圧型(バックブーストコンバータ)
- 3-4. 絶縁型と非絶縁型
- 4. 選定時に確認したいポイント
- 4-1. 電気的仕様と効率・熱設計
- 4-2. 実装環境とノイズ対策
- 4-3. 標準品で対応が難しい場合
- 5. まとめ
1. DC/DCコンバータとは
DC/DCコンバータは、入力された直流(DC)電圧を別の大きさの直流電圧へ変換する電源装置です。供給される直流電圧は一定ですが、回路内の各パーツが求める電圧は一律ではありません。DC/DCコンバータを挟むことで、元の電圧をそれぞれの部品に適した値へと変換できます。
役割と主な用途
電子機器の内部には、マイコンやセンサなど動作電圧の異なるパーツが混在しています。例えば、主電源から届く電圧が12Vや24Vであっても、マイコンには3.3V、センサには5Vといった個別の電圧生成が必要です。主電源の電圧をそのまま印加してしまうと、定格オーバーによる故障や電圧不足による動作不良を引き起こします。
こうしたトラブルを防ぎ、適切な電圧を送り届けるのがDC/DCコンバータの役割です。入力電圧を昇圧または降圧し、負荷の変動に関わらず一定の電圧を維持します。産業用ロボットや車載システム、通信機器など、高い信頼性が求められる現場で広く採用されており、システムの安定稼働を支えています。
AC/DCコンバータとの違い
電源変換装置には「AC/DCコンバータ」も存在します。両者の違いは、入力される電力の種類が「交流(AC)」か「直流(DC)」かという点です。
- AC/DCコンバータ:コンセントなどの商用電源(AC100V〜240V)から届く交流電力を、直流電力へ変換する装置(ACアダプターなど)。
- DC/DCコンバータ:すでに直流化された電力を受け取り、基板上のパーツに合わせて異なる大きさの直流電力へ変換する装置。
電子機器の内部では、この2つを組み合わせて給電ラインを構築します。まずAC/DCコンバータで交流を大元の直流(24Vや48Vなど)へ変換し、続いてDC/DCコンバータで各パーツに必要な電圧へ分散供給する構成が一般的です。
リニアレギュレータとの違い
直流電圧を降圧するには、「リニアレギュレータ」という選択肢もあります。リニアレギュレータは構造がシンプルでノイズが出にくく、小型かつ低コストで構築できる点がメリットです。ただし、余分な電圧を熱に変えて捨てる仕組みのため、入出力の電圧差が大きいと変換効率が落ちて発熱が増加します。
大電流を扱う機器や電圧差が大きい設計にはDC/DCコンバータを、ノイズを抑えたい精密な回路や小電流の用途にはリニアレギュレータを選択します。このように、基板全体の要件に応じた使い分けが求められます。
2. 仕組み
DC/DCコンバータが高効率で電圧を変換できるのは、「スイッチング制御」を行うためです。半導体スイッチで電力をパルス状に刻み、エネルギーの蓄積と放出を繰り返しながら電圧を調整します。
基本回路構成とスイッチング制御
回路は主に、スイッチング素子(FETなど)、コイル(インダクタ)、ダイオード、コンデンサで構成されます。スイッチを高速でON/OFFさせ、ONの間にコイルへ蓄えた磁気エネルギーを、OFFの間に負荷側へ届けるのが基本動作です。このとき、ON時間とOFF時間の比率(デューティ比)を制御ICで調整することで、目的の出力電圧を取り出せます。余分な電力を熱として捨てずにエネルギーの受け渡しで調整するため、高い変換効率を維持できます。
電圧を昇圧・降圧・反転する原理
回路の構成や制御を工夫することで、電圧を下げる「降圧」、上げる「昇圧」、符号を逆にする「反転」といった動作を実現します。
- 降圧動作:入力電圧をパルス状に切り替え、コイルとコンデンサで波形を平滑化して低い平均電圧を取り出します。エネルギーの供給時間を調整し、必要な低電圧を出力する仕組みです。
- 昇圧動作:スイッチをOFFにした際、コイルに発生する逆起電力を利用します。この高い電圧を入力電圧へ重畳(加算)してコンデンサへ送ることで、元の入力よりも高い電圧を生成可能です。
- 反転動作:ダイオードやコイルの接続位置を変更し、正の入力から負(マイナス)の電圧を作り出します。
3. 主な種類
用途や求められる仕様に応じて、DC/DCコンバータには多様な回路方式が存在します。ここでは代表的な回路方式と構造の違いについて解説します。
降圧型(バックコンバータ)
降圧型(バックコンバータ)は、入力電圧よりも低い電圧を出力する回路方式です。産業機器の24V電源から制御用の5Vや3.3Vを生成する用途などに適しています。回路が比較的シンプルで変換効率が高く、基板へ組み込みやすい基本方式です。
昇圧型(ブーストコンバータ)
昇圧型(ブーストコンバータ)は、入力電圧よりも高い電圧を出力側へ供給する回路方式です。バッテリー駆動の機器や高電圧を要するセンサ部で使われます。電圧を引き上げる分だけ入力側の電流が大きくなるため、部品の耐電流性能に配慮した選定が必要です。
昇降圧型(バックブーストコンバータ)
昇降圧型(バックブーストコンバータ)は、入力電圧が変動しても一定の出力電圧を保持できる回路です。回路構成はやや複雑になりますが、バッテリー放電によって入力電圧が低下する環境でも指定の電圧を安定供給できます。
絶縁型と非絶縁型
回路の入力側と出力側が電気的に切り離されているかどうかも、設計における重要な分け方です。
非絶縁型は、入出力でグランド(GND)を共有する構造です。部品点数が少なく小型かつ低コストで構築できるため、一般的な基板上の電圧変換で幅広く採用されています。
一方で絶縁型は、トランスを用いて一次側と二次側を電気的に分離します。高電圧を扱う産業装置での感電防止や、グランドノイズの回り込みを遮断する目的で選ばれます。医療機器や産業用通信インターフェースなど、高い安全性とノイズ耐性が求められる環境で活用されています。耐電圧5kVを保証する強化絶縁型もあります。
4. 選定時に確認したいポイント
要求条件に適合するDC/DCコンバータを選ぶには、単純な入出力電圧の設定だけでなく、機器全体の実装環境や電気的特性を考慮することが重要です。
電気的仕様と効率・熱設計
選定の初期段階では、入力電圧の変動範囲、必要な出力電圧精度、最大負荷電流といった基本仕様を確認します。それに加えて、電力変換効率の確認も重要です。図に例を紹介します。使用温度範囲と出力の関係を表すディレーティング曲線もあわせて確認しましょう。
変換効率が低いと、失われた電力の多くが熱として放出されます。発生した熱は周囲にある電子部品の寿命を縮める原因になりかねません。そのため、許容できる発熱量を見極めた上で、放熱シートやヒートシンクの装着、ケースの放熱構造などを合わせて検討する必要があります。例えば、入出力差の大きいリニアレギュレータは、放熱シートを介してヒートシンクに固定するのが普通です。
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【例】MOTIEN MR-78XX-1.0 |
実装環境とノイズ対策
DC/DCコンバータは高周波でスイッチングを行うため、ノイズの発生をゼロに抑えることは困難です。発生した伝導ノイズや放射ノイズが、近接する精密な計測回路や通信ラインに悪影響を及ぼすリスクが生じます。
DC/DCコンバータのユニットでは、金属ケースを適用して、外部へのノイズ放出、外部からのノイズ侵入による誤動作を防止したものがあります。
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【例】MOTIEN MR-78XX-1.0 |
ノイズを規定値以下に抑えるには、入力部や出力部にコモンモードチョークコイルやフィルタコンデンサを配置する対策が有効です。併せて、基板の配線パターン設計やシールドの追加といったノイズ制御を行います。また、設置場所の振動や温度変化など、物理的な環境耐性も考慮して選定を進めます。DC/DCコンバータユニットのカタログには、推奨される回路図が記載されているので参照してください。図はその一例です。
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【例】MOTIEN MR-78XX-1.0 |
標準品で対応が難しい場合
市場で流通している標準品のDC/DCコンバータは、一般的な用途に合わせて設計されています。しかし、特殊な産業用途や独自の設置環境では、既製品だけでは要求仕様を満たせないケースも珍しくありません。
標準品を無理に組み合わせて対応しようとすると、回路規模の増大や電力効率の低下を招く恐れがあります。そのため、トランスやコイルなどの磁性部品から自社仕様に最適化できる「カスタムDC/DCコンバータ」の導入が有効な選択肢となります。
高周波部品や磁性材料のノウハウを持つ専門メーカーであれば、回路設計から試作・受託製造まで一貫して対応できます。市販のカタログ品で条件に合う電源が見つからない場合は、カスタム電源の開発実績があるメーカーへいちど相談してみるとよいでしょう。
5. まとめ
DC/DCコンバータは、電子機器や産業装置の内部で安定した電圧を作り出す電源部品です。昇圧・降圧・昇降圧といった機能の違いに加え、絶縁型と非絶縁型の使い分けなど、用途に応じた適切な選定が求められます。
選定に際しては、単に電圧値を合わせるだけでなく、変換効率に伴う熱設計や、周囲回路へ与えるノイズへの配慮が欠かせません。標準品では対応が難しい特殊な電圧要件や設置環境に直面した際は、専門的な知識を持つパートナーに相談し、カスタム仕様や特注電源の活用を検討するのもひとつの手段です。
株式会社尾関では、トランスやコイル、磁性材料のノウハウを活かし、お客様の仕様に合わせたカスタムDC/DCコンバータの選定・調達をサポートしています。電源開発でお困りの際は、ぜひお気軽にご相談ください。







