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コイル・リアクトルはなぜ発熱するのか? 放熱対策の基本を解説

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コイル・リアクトルはなぜ発熱するのか? 放熱対策の基本を解説

コイルやリアクトルは、構造上、電流を流すだけで内部に熱が蓄積していく部品です。どの程度発熱するのか、また熱がどう伝わるかを考慮せずに設計を進めると、部品自体の寿命を縮めるだけでなく、周囲の回路の動作不良を招く原因になります。本記事では発熱の原因から放熱対策まで解説します。

1. 発熱が起こる理由

コイルやリアクトルの発熱には、複数の物理的要因が関わっています。まずは基本となる仕組みから確認しましょう。

銅損と鉄損とは

コイルの発熱は、主に銅損と鉄損という2つの損失によって生じます。銅損は巻線の電気抵抗によって発生する熱であり、電流が大きいほど増加します。

鉄損は、鉄心内部で生じる渦電流損とヒステリシス損の総称です。周波数や磁束密度が高くなるほど影響が大きくなります。ヒステリシス損は周波数に比例し、渦電流損は周波数の二乗に近い関係を持ちます。よって、高周波化が著しい電源回路では鉄損による発熱の影響が大変大きくなります。

渦電流損は磁束の変化にともなう鉄心内部の誘導電流、ヒステリシス損は鉄心材料の磁化・脱磁の繰り返しが原因です。この2つの損失が合わさり、コイル全体の温度が上昇します。

損失の割合は、使用周波数や電流波形によって変動します。そのため、どちらの損失が優位になるかを見極める視点が欠かせません。

大電流時に熱が増す理由

大電流が流れると、巻線の抵抗による熱量は電流の二乗に比例して増大します。特に定格付近や過電流の領域では、わずかな電流増加でも発熱量は急激に大きくなります。さらに、高周波では表皮効果によって電線の実効的な断面積は小さくなるため、一層発熱に拍車がかかります。

そのため大電流用途では、通常よりもシビアな放熱設計が不可欠です。パワコンや充放電検査装置のように電流変動が大きい機器では、瞬間的な電流ピークに対する耐熱余裕も設計に織り込む必要があります。

発熱を放置するリスク

発熱を放置すると絶縁材の劣化や磁気特性の変化が進み、最終的にコイルの寿命を縮めます。

絶縁材料は使用温度の上限を超えて使われ続けると劣化が加速し、高温状態が長引くほど寿命は短くなります。また、高温状態が続けば材質や動作条件によってインダクタンス値が変動し、回路全体の動作精度に影響を及ぼしかねません。放熱対策は、性能維持と長寿命化の両面で必要な工程です。

発熱リスクは以下の通り整理できます。

  • 絶縁劣化:電線の絶縁被膜材料の熱硬化およびクラック発生
  • 特性変動:高温による鉄心の磁気特性の変動
  • 寿命短縮:熱ストレスの累積にともなう部品交換頻度の増加

発熱を軽視すると、設計段階で想定していた性能を長期間維持することが難しくなります。

2. 放熱性を決める構造

発生した熱を効率よく逃がせるかは、部品の構造に左右されます。鉄心の材質や巻線の形状、外装による放熱性の違いを解説します。

鉄心の材質と発熱

鉄心にはケイ素鋼板やフェライト、ダストコア、アモルファスなど複数の材質があり、それぞれ鉄損の特性が異なります。

高周波用途では、鉄損を抑えられるフェライトやダストコア、アモルファスが多く選ばれます。
ケイ素鋼板は比較的低い周波数帯に適しており、電源トランスなどで広く使われてきました。
フェライトは電気抵抗が高く渦電流損を抑制できるため、高周波電源やスイッチング電源との組み合わせに向いています。
ダストコアは微量元素の添加、粒間絶縁技術や造粒工程の改善などにより、その性能は近年著しい発展を遂げ、高周波で駆動するコイルに欠かせない材料となっています。

材質選定は、発熱量の抑制を左右する重要な要素です。

巻線構造と熱の伝わり方

巻線の巻き方や配置によって、熱の伝わり方は変化します。平角線を使ったエッジワイズ巻線は丸線に比べて占積率が高く、導体の断面積を広げて電流密度を低く抑えられる構造です。占積率が高いため限られた空間でも導体を密に配置でき、同じ体積で優れた電流容量を確保できます。

ただし、密な構造ほど内部に熱がこもりやすい側面もあるため、放熱経路の確保が設計上の重要なポイントです。

同じ断面積を持つ電線を巻いた場合、平角線エッジワイズ巻きは丸線多層巻きよりもスペースを縮小することができる。
同スペースならば、より大きな断面積の電線を適用できる。

エッジワイズコイルのメリット1

平角線エッジワイズ巻きは丸線多層巻きよりも電流の表面積を大きくとれるため、高周波による表皮効果を低減できる。
→大電流・高周波の発熱を抑制できる。

エッジワイズコイルのメリット2

ケーシングの有無

ケーシングの有無も放熱性を左右します。ケースを持たないオープン(ケースレス)構造は通気性に優れる反面、外部からの衝撃には弱くなります。

金属ケースで覆う構造は保護性能が高まりますが、内部の熱を外へ逃がす経路の設計が大切です。金属ケースの採用時は、内部部品とケースの接触面をどう密着させるかによって熱の伝わりやすさも変わります。

放熱経路を確保する工法には、次のような種類があります。

  • 伝導構造:金属ケースへの熱伝導を介した外気への放出⇒放熱シートの利用
  • 充填構造:内部への高熱伝導樹脂充填による熱の均一な分散

これらの構造を用途に応じて組み合わせることで、放熱性と耐環境性を両立できます。

3. 放熱対策の工法例

製品の放熱性を高めるために、設計現場ではさまざまな工夫が凝らされています。ここでは実際に広く採用されている、代表的な放熱工法を紹介します。

ポッティング構造

ポッティング構造は、コイル内部を樹脂で充填し、隙間をなくす工法です。樹脂が熱を均一に伝えるため、局所的な温度上昇を抑えられます。

空気層は熱を伝えにくい性質を持つため、内部の空隙を樹脂で埋めることで熱伝導の経路を確実に確保できます。防湿性や耐振動性も高まり、屋外や振動の多い環境での使用にも適しています。

アルミケース一体構造

アルミケース一体構造は、熱伝導率の高いアルミの特性を利用した工法です。ケースと内部部品を密着させることで、熱を外部へ効率よく伝えます。

小型化と放熱性の両立を目的に採用される場面が増えています。アルミは軽量で加工性にも優れるため、車載機器や小型電源など、軽量化が求められる用途との相性も良好です。

アルミケース一体構造
アルミケース一体構造

トロイダル型・エッジワイズ巻線

トロイダル型は、環状の鉄心に巻線を施す構造です。磁束が外部に漏れにくく、EMI(電磁干渉)の抑制にも役立ちます。

巻線構造と熱の伝わり方のとおり、ここにエッジワイズ巻線を組み合わせれば、大電流領域でも小型化と放熱性の両立が可能になります。この組み合わせは、限られたスペースでの実装に適した設計です。環状構造は表面積に対する体積比の兼ね合いから、放熱設計への配慮が必要な面もありますが、省スペース化に有効な構造上の特徴とされています。

4. 用途で変わる放熱対策

機器の仕様や動作条件によって、求められる熱対策のアプローチは異なります。大電流や小型化、高周波など、それぞれの用途に応じた設計の考え方を解説します。

大電流時の対策例

大電流が流れる用途では、銅損による発熱の割合が大きくなります。対策としては太い平角線やエッジワイズ巻線を用い、電流経路の断面積を確保しながら放熱性を高める手法が一般的です。

パワコンや充放電検査装置など、大電流を扱う機器で多く見られます。断面積を確保するほど電流密度が下がり、単位面積あたりの発熱を効率よく抑制できます。

小型化と放熱の両立

機器の小型化が進むほど、単位体積あたりの発熱密度は高くなります。そのためコイル自体の構造だけでなく、部品間の熱伝導を補助する放熱材料(TIM)の組み合わせも有力な選択肢です。

TIMには放熱シート・ゲル・樹脂といった種類があります。部品と放熱面の隙間を埋めて熱抵抗を下げ、熱の伝わりやすさを高める役割を持ちます。実装スペースや放熱経路の形状に応じて、これらを使い分けるのが基本的なアプローチです。

小型化と放熱性はトレードオフの関係ですが、コイル構造とTIMを適切に組み合わせれば、限られたスペースでも放熱経路をしっかりと確保できます。

関連記事:放熱材料(TIM)の選び方を解説! シート・ゲル・樹脂の違いと使い分けるポイント

高周波帯での注意点

高周波帯では鉄損の割合が増えるため、鉄心材質の選定が特に重要になります。フェライトやアモルファスなど、高周波特性に優れた材質を使えば、鉄損由来の発熱を最小限に抑えられます。

LLC共振回路やDAB回路など、高周波動作を前提とした回路ではこの点への配慮が不可欠であり、損失の抑制や熱設計の成否に直結します。また、高周波では表皮効果により導体の実効断面積が小さくなる現象が顕著になるため、銅損側の見積もりにも注意が必要です。

5. まとめ

コイルやリアクトルの熱設計は、発熱原因となる銅損・鉄損の把握が基本です。動作条件に応じた材質や構造を選び、ポッティングやTIMなどの放熱工法を適切に組み合わせることで、製品の長寿命化や高い信頼性を実現できます。

株式会社尾関では、コイル・リアクトル・トランスといった磁性部品に加え、放熱シートをはじめとする熱対策材料も取り扱っています。電流値やサイズなど、仕様に関するご相談はお気軽にお問い合わせください。

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