フェライトコアによるノイズ対策とは? ノイズ低減の原理から選定基準まで解説

電子機器から発生する高周波ノイズは、周辺回路の誤作動や規格不適合を招くことがあります。フェライトコアは、そのノイズを配線の外側から抑える部品として長く使われてきました。基板の設計変更をせずに後付けできる手軽さから、開発の最終段階での対策にも重宝されています。
本記事ではノイズ対策用フェライトコアの基本構造から選定基準まで解説します。
1. フェライトコアとは
フェライトコアは、酸化鉄を主成分とする磁性セラミックス「フェライト」を材料とした磁性体です。フェライトには、マンガン(Mn)と亜鉛(Zn)を含むMn-Zn系や、ニッケル(Ni)と亜鉛(Zn)を含むNi-Zn系などがあり、用途に応じて使い分けられます。まずはその基本構造や材料による特性の違いから見ていきましょう。
基本構造
ノイズ対策用のフェライトコアには、クランプ型やトロイダル型など、さまざまな形状があります。トロイダル型などは、内径に導線を通したり、巻線をして使用します。
導線とコアが組み合わさるとインダクタ(コイル)としての性質を持ちます。この性質は周波数によって変化し、比較的低い周波数ではインダクタとしての挙動が中心で、これを「誘導性」といいます。
周波数が高くなるにつれて「損失成分(抵抗成分)」が増加し、ノイズのエネルギーを熱として消費する性質が強くなります。さらに周波数が高くなり、共振周波数を超えると、寄生容量の影響により「容量性」を示すようになります。
誘導性の範囲ではノイズの伝達を抑制し、損失成分が大きくなる領域ではノイズのエネルギーを熱に変換して減衰させます。共振周波数を超えた容量性の領域では、フェライトコアによるノイズ抑制効果が低下する場合があります。
導線を通すだけで設置できるため、基板の設計変更を伴わずに追加でき、量産後のノイズ対策にも適しています。
材料の特性
フェライトコアは、主にMn-Zn系とNi-Zn系の2種類に大きく分けられます。
Mn-Zn系は電気抵抗が低いものの透磁率が高く、数百kHz〜数MHzの比較的低い周波数帯のノイズ対策に適しています。
一方のNi-Zn系は、高い絶縁性を保持し高周波帯での特性に優れており、数MHz〜数百MHz以上の広帯域な高周波ノイズ対策に向いています。
材料メーカーやグレードによって特性の分布は広いため、用途に応じて材質を選び分けることが大切です。
2. ノイズ低減の原理
フェライトコアがノイズを減らす働きは、周波数によってインピーダンスが変化する特性がもとになっています。どのような仕組みでノイズが減衰するのか、具体的な原理を解説します。
インピーダンス特性
フェライトコアに導線を通すと、高周波になるほどインピーダンスが高くなります。なお、特性のピークを超えたさらに高い周波数帯では、自己共振によりインピーダンスが低下する傾向があります。
このノイズ除去の効果は、電流を単純に遮断・反射するだけではありません。導線を流れるノイズ電流が磁束を生み出し、コアを通過する際にヒステリシス損や渦電流損などの「磁気損失」によって熱へと変換され、吸収・減衰されます。このノイズエネルギーを熱として消費するという仕組みが、フェライトコアの高周波動作の特徴です。
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| フェライトのインピーダンス特性例 |
ノイズモードへの対応
ノイズには「ノーマルモード」と「コモンモード」の2種類があります。
フェライトコアを単線に通した場合は、主に信号線とグランド間などを流れるノーマルモードノイズに作用します。回路環境によっては単線であってもコモンモード電流が混ざるケースもありますが、基本的には単線への設置がこのモードへの対策です。
複数の配線をまとめて通した場合は、往復の信号による磁束が互いに打ち消し合うため、本来の信号成分への影響は小さく抑えられます。そのうえで、同じ方向へ流れるコモンモードノイズに対してのみ作用が強まります。
実際の抑制効果はリターンパスや接地状態に依存するため、配線構成に合わせた使い分けを意識しましょう。
低周波信号への影響
フェライトコアは高周波成分に強く作用するため、通常の条件であれば直流や低周波の信号にはほとんど影響を与えません。そのため、伝送品質を損なわずにノイズだけを抑えることができます。
ただし、巻数を過度に増やした場合や、大電流が流れる回路では注意が必要です。特定の条件によっては低周波でもインダクタンスの影響が現れ、信号の波形や回路の挙動に無視できない影響を与えることがあります。
3. 種類と形状
フェライトコアには複数の形状があり、用途や設置環境に応じて選び分けられています。ここでは、代表的な形状とその特徴を紹介します。
クランプ型
クランプ型は2つ割りの構造を持ち、既存のケーブルを切断・加工せずパチンと挟むだけで手軽に後付けできる形状です。プラスチックケースの中に分割されたリングコアが内蔵されており、コネクタの脱着や再ハンダの手間が一切かかりません。
回路変更を伴わない利点から、開発最終段階の緊急対策や量産後のフィールド対策として重宝されます。優れた利便性と対策にかかる時間を最小限に抑えられる点は、現場のエンジニアから高い支持を得ています。

トロイダル型
トロイダル型はリング形状で、導線を通したり、巻線をして使用します。クランプ型のような構造上の隙間(エアギャップ)がないため、より高い減衰効果を得やすい形状です。
ただし、巻数を増やすと巻き始めと巻き終わりが物理的に近づき、その間の浮遊容量(寄生容量)が増加して高周波側の性能が下がることもあります。
材質による違い
フェライトコアの形状は、使用する材質(Mn-Zn系・Ni-Zn系)の特性に合わせて工夫されています。
高い絶縁性を持つNi-Zn系は、薄型タイプやフラットケーブル用に多く用いられます。他部品と接触しやすい狭い隙間や、リボン配線でもショートのリスクを抑えられるためです。
一方、低周波に強いMn-Zn系は、主に導電対策が必要な箇所や、大型の電源線向けに採用されます。
なお、IC等に直接貼り付ける板状のものは「電波吸収シート(磁性シート)」という別カテゴリの製品です。材質ごとの電気的な特性を知ることで、形状選びの自由度がさらに広がります。
4. 選定基準
フェライトコアの効果を最大限に引き出すには、対象周波数や設置環境に合わせる必要があります。実務で失敗しないために、確認すべき3つの選定基準を見ていきましょう。
周波数帯の確認
抑えたいノイズの周波数帯に合わせて、材料を正しく使い分けることが大切です。
AMラジオ帯やスイッチング電源の低次高調波(数百kHz〜数MHz程度)ならMn-Zn系が向いています。それ以上の高周波(数十MHz〜数百MHz帯以上)を狙うなら、Ni-Zn系の出番です。
重視する周波数によって材料や巻数の選定が変わるため、後戻りを防ぐためにもあらかじめ確認しておくことが重要です。
設置場所の考慮
フェライトコアは、配線のどこに取り付けるかによって、ノイズを抑える効果は大きく変わります。実務での定番は「ノイズ源のすぐ近く」や「ケーブルが筐体から外へ出る直前」への設置です。ただし、放射ノイズと伝送ノイズのどちらを抑えたいかでベストな位置は異なります。EMI試験(不要輻射計測)の現場などでは、出口側(I/O付近)への配置が優先されるケースもよくあります。
個数と巻数の調整
1個で十分な効果が出ないときは、コアの個数を増やすか、導線の巻数を増やして調整しましょう。巻数を増やすと低い周波数への効果が高まる反面、浮遊容量の影響で高周波側の性能が落ちてしまう性質があります。
また、大電流が流れる電源線などに単線で取り付けると、コアが「磁気飽和」を起こして効果が激減しかねません。実際に使用する際は、流れる「直流重畳電流」の大きさとコアの飽和特性をしっかりとチェックしましょう。
5. まとめ
フェライトコアは、フェライト材料のインピーダンス特性と磁気損失を利用し、周波数特性に応じて高周波成分を熱エネルギーとして減衰させる部品です。構造や材料、形状によって適した用途が異なるため、対象となる周波数帯や電流条件、設置環境をふまえて選びましょう。
株式会社尾関では、フェライトコアをはじめコイル・リアクトルなどの磁性部品を取り扱っています。用途や周波数帯に合わせたご相談も受け付けておりますので、ノイズ対策にお悩みの際はお気軽にお問い合わせください。




