カラーコンクリートのある風景:第3回・道の景観

コンクリートに無機顔料を直接練り込んで着色した「カラーコンクリート」は周辺の風景に溶け込んだ『景観性』をつくり、またコンクリートの機能はそのままに『デザイン性』を表現できます。
専門誌「土木技術」2020年11月号特集:「いろと土木」に掲載された記事をもとに、テーマに応じた事例を挙げながら、全5回にわたって「カラーコンクリート」をご紹介します。
専門誌「土木技術」2020年11月号特集:「いろと土木」に掲載された記事をもとに、テーマに応じた事例を挙げながら、全5回にわたって「カラーコンクリート」をご紹介します。
第3回・道の景観
ヨーロッパや米国ではかなり前からデザイン性を持たせた「カラーコンクリート」の設計が行われています。高速道路の遮音壁にはカラーコンクリート製品が広く使われており、塗装仕上げとは違った味わいある景観が醸し出されています。日本では都市部や近郊を走る道路空間にコンクリート構造物を造る際に、『いろ』に力点を置いた事例があります。
例えば、海底トンネルにつながる擁壁側壁を快適な道路空間として調和がとれるように景観検討が行われた事例では、地層を思わせる4色の無機顔料「バイフェロックス」をコンクリートに添加して練り混ぜて打設したあとで、そのコンクリート表面を一部チッピングするデザインが採用されました。これは海底の地層をイメージさせるために、あえて鮮やかな色ではなく、本来の『いろ』を再現するように工夫されています。場所柄、自動車の排気ガスによる汚れを考慮した比較検討の上、ほぼメンテナンスフリーの「カラーコンクリート」が採用されています。

また、「カラーコンクリート」の色上がりを幅広く検討した土木構造物の事例として、高速道路ジャンクション工事のコンクリート橋脚が挙げられます。色の検討では周りの風景のなかで、ランドマークとなるように合計129本の橋脚がカラーコンクリートの打ち放しで設計されました。コンクリート表面を塗装仕上げする場合に比べて色数や仕上がりの均一性は望めませんが、コンクリートが本来持つ素材感や質感はそのままに、ナチュラルカラーの打ち放しコンクリートによる6色のグラデーションが実現しました。当初の顔料配合は25色にも及びましたが、施工から20年近く経過しても夕陽に明るく照らし出された色上がりが鮮明です。

さらに県立自然公園に建設された大規模橋梁では周辺の自然景観との調和を図るため、露頭している風化花崗岩に似せて薄茶系の『いろ』が採用されました。主塔デザインは鶴が翼を広げて飛翔する姿をモチーフにしています。自己充てん型高強度高耐久コンクリートを用いるなど、新しい取り組みがなされた事例です。

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